インプラント治療は、抜け落ちてしまった歯の補填をする役割があり、その品質から「第二の永久歯」と呼ばれることがあります。
本記事では、インプラント治療の方法や、メリット・デメリットなどについて解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
インプラントとは
インプラントとは、歯を失ってしまったときに使用される人工歯根のことです。
顎の骨に直接人工歯根を埋め込む治療法をインプラント手術と呼び、現在では多くの歯科クリニックでこの治療が行われています。
歯を失ってしまった場合は、入れ歯や差し歯なども治療の選択肢として挙がるでしょう。
しかし、インプラントの場合は、これらの治療法よりも人工歯の品質が優れているという利点があります。
上述したように、顎の骨に人工歯根が埋め込まれているという特性があるため、食べ物を噛む力がしっかり伝わるのです。
現代で行われているインプラント治療は、1900年代の初頭時点に誕生したと考えられています。
誕生時は生体に適合することのない金属が使用されていましたが、1950年代になると生体親和性に優れたチタンが使用されるようになり、現在もこの技術が採用されているのが特徴です。
インプラントにはどんなメリットがある?
インプラント治療が現代でも多くの方に行われているのは、さまざまなメリットがあるからです。
メリットは大きく分けると4つ挙げられます。
以下で解説しているので、詳しく見てみましょう。
咀嚼機能が回復する
インプラント治療を行うことで、咀嚼機能の回復と生活の質の改善が期待できます。
歯を失った場合に治療をしても、その歯の品質が低いと、咀嚼機能は十分に改善しません。
なぜなら硬いものが噛みにくくなることで、十分に咀嚼をしないまま飲み込んだり、食べることを必要最低限にしたりしてしまうからです。
消化機能や精神面などに悪影響を及ぼし、食事を楽しむことが満足にできなくなってしまいます。
食事を通常通り続けていたとしても、欠損していない部分を使って食事をすることが増えていくでしょう。
これでは顎の筋肉へ、アンバランスな負荷がかかってしまいます。
しかし、これらの問題はインプラント治療を行うことで、改善が期待できるのです。
インプラントなら咀嚼がしやすいため、食事を今まで通り楽しむことができ、健康状態にも影響を及ぼしにくくなります。
歯を失ってしまう前と同様の生活を続けられるため、生活の質が低下してしまうリスクが少ないのです。
健康な歯は削らない
インプラントは健康な歯を削る必要がほとんどないため、他の歯に影響を与えることがありません。
他の治療法として挙げたブリッジや入れ歯などの場合は、むし歯になっていない歯も削ることがあります。
せっかく健康な歯を維持してきたとしても、削らなくてはならないのは負担になるでしょう。
しかしインプラントなら、ほとんどの治療プランで削らなくても済むという利点があります。
基本的にインプラントは、顎の骨に人工歯根を埋め込む治療法であるため、他の歯を頼ることなく独立が可能です。
治療後の見た目がキレイ
インプラントは見た目が美しく、美意識が高い方から選ばれる傾向にあります。
せっかく歯の治療をするなら、見た目にもこだわりたいという方から人気です。
インプラントは天然の歯とほぼ同じビジュアルのため、義歯だと気付かれにくいという点は、大きな利点と考えられるでしょう。
対して入れ歯やブリッジの場合は、天然の歯とは異なる見た目のため、気付かれやすいという難点があります。
色が天然の歯とは異なる、金属部分が見えるなど、インプラントにはない特徴があるからです。
インプラントの義歯には、セラミック・ジルコニアなどが使われるため、非常にナチュラルな見た目です。
優秀な歯科技工士のスキルによって、自然な美しさを手に入れられるでしょう。
日々のケアが簡単
メンテナンスが簡単であるという点でも、インプラント治療は多くの方に選ばれています。
日々のケアが面倒だと、お手入れをサボってしまい、結果的にむし歯や歯周病になるリスクが上がってしまうでしょう。
これではまた別の歯を治療しなくてはならず、悪循環になってしまいます。
インプラントは顎の骨に直接埋め込まれているため、天然の歯のように口の中でしっかり固定されています。
そのため、通常のブラッシングをはじめとする口腔ケアを行うだけで、簡単にメンテナンスが可能です。
これが入れ歯を使用しているとなると、毎回取り外しを行って、洗浄を行うという手間が発生してしまいます。
インプラントならそのようなストレスがなく、いつも通りの口腔ケアを行うだけで問題ありません。
インプラントのデメリット
さまざまなメリットが挙げられるインプラントですが、当然ながらデメリットも存在します。
もし今後インプラント治療を考えている場合は、デメリットもしっかり理解したうえで診察を受けることが重要です。
以下でデメリットについて2点ご紹介するので、参考にしてみてください。
治療は保険対象外
インプラント治療の大きなデメリットとして挙げられるのが、治療費が保険対象外という点です。
インプラント治療に魅力を感じたものの、保険対象外のため治療費が高額で、他の治療法を選択したというケースもあります。
通常は3割負担の治療費が、10割全て自己負担になるという点は、金銭的な負担になりかねません。
先天的な要因がある場合は、例外として保険適用が認められますが、一般的にはほとんどが自己負担になるのが現実です。
インプラント治療を受ける際には、あくまでも「自由診療」になるという点を理解したうえで診察を受けましょう。
費用はクリニックでどのような治療プランを選択するのかによって変わるため、事前にいくらかかるのかを確認しておくことが大切です。
また、治療費が保険適用外でも、医療費控除を受けることは可能です。
治療を行う際は、申告を忘れずに行いましょう。
治療期間が他の治療と比べて長い
インプラント治療は比較的治療期間が長く、すぐに歯を治したいという方には不向きです。
通院回数は最低でも5回程度で、歯の状態によっては半年以上通院しなくてはならないケースもあります。
通院できるタイミングが限られているという方は、多少なりとも負担となってしまう点です。
通院を重ねる必要があるのは、顎の骨に人工歯根を埋め込む外科手術が必要になるからです。
歯肉を切開する工程をはじめ、さまざまな医療技術が求められるため、その分治療期間が数か月かかります。
インプラントを挿入してから、歯と結合するのには最低でも2カ月ほどかかるため、ある程度余裕を見て治療を決断したほうがよいでしょう。
インプラント手術を受ける流れについて
インプラント治療はすぐにその場で受けられるわけではありません。
まずは診察を行いながら医師と話し合って、今後の治療プランを明確にする必要があります。
実際にはどのような流れで治療が行われるのか、以下で解説しているのでイメージしてみてください。
クリニックでカウンセリングを受ける
最初にクリニックでカウンセリングを受けます。
カウンセリングを受けることで、今後どのように治療が進んでいくのかが、明確にイメージできるようになるでしょう。
医師によるインプラント治療に関する説明も行われるため、治療にかかる期間や注意事項など、さまざまなことを教えてもらえるでしょう。
もちろんこの際に、不安なことがある場合は医師へ質問も可能です。
特にインプラント治療を受ける場合は、治療費に関することはどうしても心配になってしまうでしょう。
医師に直接確認することで、今後の治療を安心して受けられるようになるので、遠慮なく尋ねてみてください。
術前検査・治療計画立て
カウンセリングが終わると、術前検査が行われます。
術前検査では、口腔状態を把握するために、CTやレントゲンなどが使われているのが特徴です。
歯はもちろん骨や神経などの状態をチェックして、インプラント治療を受けても問題ない状態なのかを確認します。
一人ひとり口の中の状態は異なるため、術前検査で見極めながら、今後の治療プランを立てていきます。
医師は負担を最小限にできるよう、可能な限り低リスクな方法を提案してくれるので、安心して検査を受けられるでしょう。
検査結果に応じて治療プランが決まるため、インプラント治療においてとても大切な工程です。
また、万が一口腔内に問題が発見された際には、インプラント手術が行えないと判断されることもあります。
その場合は医師から理由や、必要に応じて代替案を提案してもらえるので、話し合いながら今後のことを決めましょう。
インプラント埋入手術
治療プランが決まったら、インプラント埋入手術です。
手術は1回法・2回法のいずれかで、インプラントが口腔内に埋め込まれます。
1回法は手術を1回だけ行い、必要な工程を全て済ませてしまう方法です。
歯肉を切開するのも1度だけで済むため、負担が最小限になります。
対して2回法は、手術を2回に分けて行うため、1回法に比べると負担が増えるリスクがあります。
現在は負担やリスク軽減のために、1回法を選択するクリニックがほとんどです。
しかし、口腔状態によっては2回法を提案される可能性もあります。
術後は歯肉を縫い合わせて、骨とインプラントが結合するまで待つ必要があります。
その後インプラントに人工の歯を取り付けることで、治療は完了です。
インプラントと他の治療との違い
インプラントは保険適用外ですが、ブリッジと入れ歯は保険適用となっています。
これらは治療法として、どのような違いがあるのでしょうか。
以下で解説します。
ブリッジ
ブリッジは、歯が抜けている部分の両脇にある歯を削り、柱のような役割をさせて、人工の義歯を針金で取り付けます。
ブリッジは入れ歯よりも美しい見た目ですが、健康な歯を削るという工程が必要になるのが難点です。
入れ歯
歯がない部分を歯茎と同じ色の樹脂を使ってカバーし、その上に人工の歯を並べる方法です。
入れ歯には安定させるための金具がかかっているため、咀嚼をする際にズレてしまい、痛みが発生する場合があります。
ただし、必要に応じて簡単に脱着できるため、対策方法がないわけではありません。
他の治療法と比べると、硬いものを咀嚼しにくいという点はマイナスポイントでしょう。
インプラント手術を受ける際の注意点
インプラント治療を受ける場合は、事前に準備しておくべきことがあります。
以下では注意点についても解説しているので、治療を考えている方は参考にしてみましょう。
治療前の体調ケア
手術をする場合は、体調ケアが大切になります。
これはインプラント治療における手術も例外ではありません。
手術をする前日はしっかり睡眠を取り、身体を休ませましょう。
普段から夜更かしをする習慣がある方は、特に注意が必要なポイントです。
また、手術後の体調ケアも重要です。
タバコを吸うと、歯肉や骨などに悪影響を及ぼしてしまい、切開部分が治りにくくなったり、骨とチタンが結合しにくくなったりします。
可能な限り控えましょう。
術後は入浴や激しい運動を控える
術後は体への負担を抑えるために、運動を控えましょう。
血行が良くなりすぎると、出血が起きてしまったり、患部が痛んでしまったりする恐れがあります。
運動は健康に良いことではありますが、手術をした後に行ってしまうと、かえって身体に悪影響です。
さらには激しい運動によって身体をぶつけて、傷口が開いたり、インプラント接合部に異常が起きたりする可能性も考えられるでしょう。
できる限り安静にしておくことを心がけてください。
定期的なメンテナンスを行う
インプラント手術が終わったからと言って、メンテナンスを疎かにしてはいけません。
定着具合や噛み合わせなどをしっかり確認して、口腔ケアを行うことを徹底しましょう。
また、当然ながら日頃のブラッシングをはじめ、基本的なお手入れも欠かさずに行うことが大切です。
日頃の口腔ケアについても、医師が丁寧に指導してくれます。
メンテナンスに力を入れていれば、口の中の健康はもちろん、美しさも維持できるでしょう。
まとめ
インプラント治療には、メリットとデメリットがそれぞれ存在します。
もし今後治療を受ける場合は、これらをしっかり理解したうえでクリニックを受診してください。
また、本記事ではインプラント治療の流れや注意点なども解説しているので、実際に治療を受けたときのことをイメージしてみることをおすすめします。