顎関節症のケアに、マウスピースを使うことがあります。
ただ、マウスピースの矯正により効果を得られる場合と、得られない場合があるのはご存知でしょうか。
今回は、顎関節症におけるマウスピースの効果について、詳しく解説していきます。
顎関節症とはどんな症状?
顎関節症になると、口を開閉する際に、顎関節から「カクカク」のような音が鳴ります。
また、食事や会話などをしているだけで、顎に痛みを感じる場合もあります。
場合によっては炎症が起こってしまい、より強い症状が出るケースも珍しくありません。
顎関節症になると、少なからず日常生活に悪影響を及ぼしてしまうのです。
顎関節症の原因はさまざまなので、一概にはいえません。
一般的にはストレスによる筋肉の緊張・歯ぎしり、または嚙み合わせのバランスなどが考えられます。
生まれつき顎関節に異常があったり、顎関節に打撲のような外傷を受けたりすることで、症状が出ることもあるでしょう。
その歯並び、顎関節症の原因かも?マウスピースが効果的な歯並びの種類
上述したように、顎関節症の原因は幅広く考えられます。
その中でもマウスピースで矯正効果が見込めるのは、歯並びが影響している場合です。
嚙み合わせが悪いと、咀嚼をした際に筋肉へ与える負荷が、アンバランスになってしまいます。
この状態が続くことで、顎関節の負担になり、症状が起こるという仕組みです。
マウスピースを日常的に使用することで、歯並びの改善を目指しつつ、顎関節へ与える負担を最小限に抑えることが可能です。
継続していけば、痛みも徐々に軽減していくでしょう。
以下ではマウスピースで矯正ができ、尚且つ顎関節症のリスクがある歯並びについて解説していきます。
もしご自身に当てはまる場合は、マウスピースによるケアを視野に入れてもよいでしょう。
オープンバイト
オープンバイトは、奥歯を嚙み合わせたときに、前歯の上下に隙間がある状態のことをいいます。
嚙み合わせても、前歯の上下がくっついていない状態に見えるのが特徴です。
歯並びに問題がない場合は、歯全体に負荷が行き渡るようになります。
しかしオープンバイトの場合は、前歯に負荷が全くかからないため、その分奥歯に負担がかかってしまうのです。
顎関節へのダメージが大きくなるため、顎関節を引き起こすことがあるでしょう。
また、オープンバイトの程度によっても、顎関節症のリスクは変わります。
もし上下の前歯がかなり開いていた場合、より奥歯側への負担が大きくなり、症状が出やすくなるでしょう。
ディープバイト
ディープバイトは、奥歯を嚙み合わせたときに、下の前歯が上の歯に隠れてしまうことを指します。
まるで上の歯で下の歯を包み込んでいるような見た目になってしまう状態をイメージしてください。
ディープバイトは一般的に咀嚼力が強いという特徴があるため、顎に強い負荷がかかってしまいがちです。
しかも上の歯によって、下の歯がカバーされている状態になるため、思うように動かず負担がかかりやすいという難点もあります。
こちらも顎関節症のリスクが高くなります。
さらに歯が口腔内に当たることで、皮膚を切ってしまう場合もあるため、さまざまなトラブルが考えられるでしょう。
クロスバイト
クロスバイトは、上下の歯が揃っておらず、横にずれた状態になっていることをいいます。
多くは歯列の中心がずれている傾向にあるのが特徴です。
クロスバイトの場合は、咀嚼した力のバランスが非常に悪く、顎に均一な力がかからなくなります。
さらに顎関節そのものの位置がずれてしまう恐れがあるため、カクカクとした音や痛みなどを感じるリスクが高いのです。
マウスピースで顎を痛めてしまう場合
マウスピースは顎関節症のケアに有効であるといわれていますが、稀に顎が痛くなるケースがあるといわれています。
これはどのようなことが原因として考えられるのでしょうか。
以下ではよくある一例を紹介しているので、参考にしてみてください。
正しくマウスピースを装着していない
そもそもマウスピースを、正しい方法で装着できていない可能性があります。
矯正や顎関節症の予防改善に効果的なマウスピースですが、正しく使えていないと十分な効果を得られないどころか、かえって痛みが発生してしまうことを理解しなくてはなりません。
特にマウスピースは、歯に直接装着するものであるため、正しい方法で使用できていないと、強い痛みを感じやすいものです。
顎骨だけではなく、歯にまで直接的な負担がかかってしまうので、まずはマウスピースの装着方法を意識するところから始めましょう。
マウスピースを装着する際は、歯科医院での指導を守ることが大切です。
着脱の方法は前もって教えてもらえるので、自分一人でも実践できるか試してみてください。
また、不安な場合は正しく使えているかを、専門医に確認してもらうのもおすすめです。
治療中は痛みを伴うこともある
マウスピースは一般的に、歯の嚙み合わせをずらして矯正するものであるため、装着していると多少の痛みを感じる場合があります。
しかし痛みは、あくまでも一時的な症状であることがほとんどなので、過度に気にする必要はありません。
マウスピースを装着し続けていれば、そのうち慣れて、痛みを感じなくなっていきます。
ほとんどは一時的な痛みですが、あまりにも痛みが強い・長引くなど、おかしいと感じることがあれば歯科医院で相談するのがおすすめです。
また、マウスピースを装着している際は、できる限り安静にしましょう。
気になって顎をカクカクと鳴らしてしまう方がいますが、可能な限り負担を与えないようにしてください。
痛みが出る原因になります。
治療の負担を減らしたいなら就寝時の装着がおすすめ
マウスピースを使用していると、上述したように多少の負担がかかります。
歯を矯正するために必要な負担ですが、可能な限り回避したい場合は、就寝時に装着することを心がけてみましょう。
就寝中にマウスピースを装着すると、眠っている最中の歯ぎしり・食いしばりなどをカバーできます。
眠っている間は意識がないため、どうしても歯ぎしり・食いしばりを我慢することができません。
しかし、マウスピースを装着していれば、顎にかかる負担を解消可能です。
マウスピースでは効果が実感しにくい顎の症状とは?
ここまで、顎関節症の治療に、マウスピースが使われることがあると解説してきました。
しかし、全ての症状にマウスピースが効果をもたらしてくれるわけではありません。
中には効果が実感しにくい症状も存在します。
以下では、そんな症状について詳しく紹介しているので、チェックしてみましょう。
顎関節症の原因が歯並びじゃない
顎関節症の原因に歯並びが関係ない場合は、マウスピースを使用しても改善が難しいと考えられます。
上述した3種類の歯並びに当てはまらず、他に原因が考えられる場合は、マウスピースで矯正をしても改善は期待できないでしょう。
そもそも顎関節症の原因はさまざまで、何によってトラブルが起こるのかを特定することが難しいのです。
自分では歯並びが原因だと思っていても、実は就寝中の歯ぎしりが関係していたというケースもあるため、無自覚のうちに原因を作っていることも考えられます。
マウスピースによる矯正をすると、顎関節症が改善するというイメージが強くなりがちですが、実際にはそうとは限らないことを理解しておきましょう。
重度の顎関節症
顎関節症は、重症度も人それぞれ異なります。
軽度であれば、歯並びが原因の顎関節症をマウスピースで改善させることは可能ですが、あまりにも重症の場合は難しくなるでしょう。
なぜなら必要に応じて、外科による本格的な治療が必要になるからです。
そのため、重症の場合にマウスピースを使用しても、あまり効果を実感できない場合があります。
治療方法は症状の程度や原因によってさまざまなので、一概にはいえません。
まずは歯科医院へ相談をして、治療プランを考えてもらうことが大切です。
歯ぎしりや食いしばりが強く、マウスピースが壊れてしまう方
顎関節症の原因には、歯ぎしり・食いしばりなどが挙げられます。
非常に歯と顎骨に対して負担がかかる行為であり、症状が悪化する可能性も否定できません。
非常に厄介なのが、マウスピースが壊れてしまう恐れがあるという点です。
歯ぎしり・食いしばりによって、マウスピースに負荷がかかりすぎてしまうと、そのうち壊れて作り直さなくてはならなくなります。
もし壊れてしまうほどの負担をかけてしまう場合は、マウスピース治療には不向きです。
このようなときも歯科医院を受診して、治療プランを考えてもらう必要があります。
顎関節症でマウスピースを使用する際の注意点
顎関節症でマウスピースを使用する場合は、いくつか注意点があります。
これらを知っておかないと、症状を改善させるどころか、かえって悪化させてしまうリスクもあるため、必ず把握しておきましょう。
マウスピースによる顎関節症対策は、口の中の健康にも大きな影響を与えます。
正しいお手入れ方法や注意点などを知っておけば、健やかな口腔環境を目指せるはずです。
市販のものは使わず、歯科医院で作ってもらう
マウスピースは、市販でも取り扱われています。
商品によってタイプはさまざまですが、既に完成しているマウスピースを使用する、自分で型を作ってマウスピースを作るなど、幅広い製品が販売されています。
しかし、これらを使用することはおすすめできません。
既製品のマウスピースは、自分の歯にぴったり合う形ではないため、かえって強い負担をかける恐れがあります。
これでは顎関節症を改善させるどころではなくなり、かえって歯並びが悪くなる場合もあるでしょう。
自分で型を作る場合も、結局は素人が自己流で行うため、失敗するリスクがあるのです。
歯並びを矯正するためには、ある程度の時間がかかります。
長く使い続けるからこそ、歯科医院で自分に合うものを作ってもらいましょう。
多少の痛みが出てもマウスピースを外さない
マウスピースは、歯に直接装着するため、多少痛みが出るのが一般的です。
しかしこの痛みは決して異常なものではありません。
むしろ矯正の際に痛みが出るのは普通なので、マウスピースを外さないように注意しましょう。
余程痛い場合は別ですが、そうではないならある程度の痛みを我慢しなくてはなりません。
矯正をするためにはしっかりマウスピースを使用し続ける必要があるため、可能な限り外さないことを意識してください。
万が一痛すぎる場合は、自己判断で着脱をするのではなく、歯科医師に確認しましょう。
医療知識がある専門家なら、どのようにケアを行うのがベストなのかを見極め、的確に指導してくれます。
クリニックに相談を!顎関節症を効果的に治療するには?
顎関節症はすぐその場で改善できるものではなく、ある程度の期間治療しなくてはならないため、長期的に取り組んでいくことが必要になります。
しかし、可能な限り早く効果を得たい、確実に症状を改善させたいという方が多いのではないでしょうか。
以下ではそんな方に向けて、効果的に顎関節症を治療する方法を解説します。
カクカクとした音や痛みなど、少しでも不快な症状をカバーしたいなら、以下の2点を意識してみてください。
自分専用のマウスピースを作ってもらう
市販や通販のマウスピースを購入するのではなく、歯科医院を受診して自分専用のマウスピースを作ってもらいましょう。
この方法なら、自分の歯にぴったりな形になるため、本格的な治療が可能となります。
専門医によるサポート体制がしっかりしているため、口腔ケアに力を入れたい方におすすめです。
歯科医師はカウンセリングや検査をもとに、マウスピースを作ってくれます。
相談をしながら今後の方針を決めてくれますが、就寝時に使用するマウスピースだけではなく、昼用も作ってもらうことができるので、一度話し合ってみましょう。
マウスピース以外の治療方法も検討する
マウスピースは一般的な程度の顎関節症は治療できますが、あまりにも症状が重い場合はケアが難しくなります。
十分に効果を感じられず、お金を無駄にしてしまったり、かえって症状が悪化してしまったりする可能性も否定できません。
この場合は、別の治療方法を視野に入れてみましょう。
もちろん治療方法については、歯科医師と相談をしながら決めることができます。
自分の症状が重症なのか、マウスピースによる治療が可能なのかなど、さまざまな質問も可能です。
まとめ
顎関節症を治療するためには、マウスピースの知識をしっかり得たうえで、正しく行う必要があります。
しかし、マウスピースで必ず顎関節症を治療できるわけではなく、場合によっては別の方法を選択したほうが確実な場合もあるでしょう。
まずは歯科医院を受診して、歯科医師と相談してみることをおすすめします。