夜の歯磨きが重要というのは、よく知られています。
しかし、実は朝の歯磨きも大切です。
ただ、朝といっても、朝食前と朝食後などがあり、どのタイミングで磨けば良いのかわからない方も多いでしょう。
この記事では、朝に歯磨きをおこなうべきタイミングや、メリットなどについて詳しく解説します。
朝の歯磨きをおこなうタイミングは2回
朝に歯磨きをおこなうべきタイミングは、2回にわかれています。
それは、朝食前と朝食後です。それぞれの理由についてみてみましょう。
まずは朝食前に1回
朝、歯磨きをおこなうべきタイミングとして挙げられるのが、朝食前です。
特に起きてすぐは、ベストタイミングといわれています。
歯磨きは食後というイメージを持っている方も多いかもしれませんが、実は就寝中の口内は、細菌がかなり増殖しています。
就寝中、唾液の分泌がほとんど止まって乾燥し、細菌が増殖しやすい状態が作られてしまうためです。
寝起きの口内は、その細菌の多さから考えると、1日の中でももっとも不潔な状態といっても過言ではありません。
そのため、朝起きたら、できる限り早めに歯磨きをおこなうように心がけてください。
就寝中に細菌が増えやすい方もいる?
口内の乾燥しやすさは人によって異なり、就寝中に細菌が増えやすい方もいます。
例えば、就寝中に口呼吸をしてしまう方です。
口呼吸は、口内の乾燥を促進してしまいます。
また、歯並びの悪さによって無意識に口が開きがちであれば、同様に口内が乾燥してしまうでしょう。
他にも、服用している薬の副作用により、唾液の分泌が減ってしまうこともあります。
具体的には、抗ヒスタミン薬や鎮痛剤、抗うつ剤などが挙げられます。
これらの方は、就寝中の唾液が一層少なくなり、細菌が増殖しやすい口内環境を作ってしまいがちです。
朝食後にも1回
食べカスが口内に残るため、朝食後ももう一度歯磨きをおこないましょう。
ただ、食後といっても、食事の直後が良いのか、30分経ってからが良いのかは、酸蝕症かどうかで異なります。
酸蝕症とは、胃酸の逆流や、酸性の飲み物の常飲によって起きる、歯のエナメル質が溶け出す疾患のことです。
エナメル質は、歯冠部分の表面を覆っており、強固に歯を守っています。
そのエナメル質が溶けた状態での歯磨きは、歯にダメージを与えてしまいます。
酸蝕症の方は、食後に水やお茶などで酸を洗い流し、唾液でpHが中性に戻る30分後を目安に歯磨きをおこなうと良いでしょう。
酸蝕症になりやすい飲食物とは?
酸蝕症は、歯の表面を溶かしてしまう症状です。
歯の健康を守るためにも、日頃から気を付ける必要があります。
具体的な対策としては、酸蝕症になりやすい飲食物を避けることが有効です。
酸蝕症になりやすい飲食物には、下記が挙げられます。
食べ物 |
りんご、パイナップル、いちご、柑橘系の果物(みかんやレモンなど)、梅干し |
飲み物 |
炭酸飲料、スポーツドリンク、ビール、ワイン、栄養ドリンク、酢を使ったドリンク |
調味料 |
お酢 |
他にも、酸蝕症は胃酸の逆流によっても起こり得ます。
胸やけや逆流性食道炎のような症状がある方は、腹八分を心がける、コーヒーや辛いものなど刺激物を避ける、腹部を締め付けないようにするなどの対策をおこないましょう。
逆流性食道炎の方は、食道がんのおそれもあるため、消化器内科や胃腸科などで診てもらうことも大切です。
また、嘔吐が頻繁に起きる方も、胃酸が口内に流れ込むため酸蝕症になり得ます。
嘔吐が起きる原因には、暴飲暴食やストレス、摂食障害を伴うような過度なダイエットなどが挙げられます。
嘔吐が頻繁に起きる方も、場合によっては一般内科や消化器内科などで診てもらうことを考えてください。
朝食前に歯磨きをおこなうメリット
朝食の前後で2回歯磨きをするのは、面倒と考えてしまう方もいるかもしれません。
しかし、それぞれメリットがあります。
ここでは、朝食前に歯磨きをおこなうメリットについて確認してみましょう。
細菌が体内に入るのを防げる
前述の通り、朝起きたばかりの口内には、夜間に増殖した細菌が多数存在しています。
増殖した細菌の数は排泄物と同等ともいわれ、口内は決して衛生的とはいえません。
そのまま唾液や食事と共に飲み込んでしまっても、胃液で処理は可能ですが、お腹の不調につながることはあり得ます。
また、誤って肺に入ると、多量の細菌が誤嚥性肺炎の原因になることもあります。
朝起きてすぐに歯磨きをおこなうことで、口内の細菌を除去し、体内への侵入を防ぐことが可能です。
口臭を防げる
朝に口臭がする原因の一つにも、乾燥と細菌が挙げられます。
人間は、唾液によって口内の乾燥を防ぎ、口内の細菌を胃液で処理しています。
それにより、起きている間なら口臭を防ぐ効果が見込めるのです。
しかし、寝ている間は唾液の分泌が抑えられています。
また、口内には、剥がれた口腔粘膜や、歯周ポケット内の食べカスなど、たんぱく質が残されていることが珍しくありません。
これらのたんぱく質は、増殖した細菌により分解され、口臭の原因となる揮発性硫黄化合物を生んでしまいます。
朝の歯磨きで口内を刺激することで、唾液分泌を促し、口臭の原因となる細菌を除去することができます。
風邪やインフルエンザの予防効果も
口内に潜んでいる細菌は、むし歯や歯周病の原因菌だけではありません。
黄色ブドウ球菌やカンジダ菌など、何百種類もいるといわれます。
その中には、風邪やインフルエンザのウイルスも含まれている点に注意が必要です。
朝の乾燥した口内では、これらのウイルスも当然ながら増殖しています。
また、カンジダ菌のような一部の菌が生む「プロテアーゼ」という酵素は、風邪やインフルエンザのウイルスの働きを助ける働きをします。
ウイルスが隠れやすい舌苔までしっかり磨くことで、風邪やインフルエンザなどのリスクを軽減できるのです。
目覚めが爽やかに
朝起きてすぐ歯磨きをおこなえば、口内の不快なニオイやねばつきなどを除去できるため、爽やかな目覚めを演出できます。
歯磨き粉やマウスウォッシュなどを使えば、より爽やかな目覚めになるでしょう。
口内の神経を刺激することで、脳の覚醒が促されるため、すっきりとした気持ちで1日を始めることが可能です。
歯磨き後は洗顔も済ませれば、寝ている間にかいた汗や余分な皮脂なども洗い流して、さっぱりとした気分になるはずです。
朝食後の歯磨きのメリット
次に、朝食後に歯磨きをおこなうメリットについて確認しましょう。
朝食後の歯磨きには、主に2つのメリットがあります。
歯磨きで食べカスを落とせる
朝食後にも磨いておくことで、食べカスを落とし、細菌が繁殖しにくい口内環境を作ることができます。
朝食後は、当然口内にはごはんやパンなど、食べカスが残されている状態です。
これらは口内に生息する細菌のエサになり、口内トラブルの原因になってしまいます。
特に糖分は、むし歯菌のエサになり、歯を溶かす歯垢を作り出します。
歯垢は歯周病発生にも関係するため、歯周ポケットまで磨いて除去しておきたいものです。
たんぱく質も、放置していると口臭の原因になってしまいます。
ブラッシングだけでなく歯間ブラシなども用いて、しっかり歯の間まできれいにしましょう。
口内が酸性に傾く時間を減らせる
朝食後は、口内が酸性に傾きがちです。
食べ物が酸性だった場合はもちろん、そうでない場合も、口内に細菌のエサとなるものが多く残っています。
それにより細菌が活発になり、口内のpHを酸性に傾かせるのです。
細菌が作る酸だけでなく、口内が酸性に傾くことでも歯は溶かされてしまいます。
唾液により30分ほどで中性に落ち着いていきますが、細菌が作る酸があるため、歯の周囲のpHは戻りにくいです。
食後に歯磨きをおこなうことで、口内のpHを短時間で中性に戻すことができ、歯が酸に晒される溶かされる時間を減らすことができます。
酸蝕症の方は食後すぐに歯磨きとはいかないものの、うがいだけでも済ませておきましょう。
朝に歯磨きできないときの対処法とは
朝食の前と後、両方歯磨きをおこなうことが望ましいです。
しかし、寝坊した日や、早めの出勤が求められる日など、朝に歯磨きができないことがあります。
そのようなときの対処法について見てみましょう。
うがいで食べカスや細菌を洗い流す
歯をしっかり磨くだけの時間がないときでも、せめておこなっておきたいのがうがいです。
喉の洗浄目的としたガラガラうがいではなく、口内の洗浄を目的とするブクブクうがいが適しています。
朝食前後におこなえば、水の勢いで多少の食べカスや、口内に付着した細菌を洗い流すことができます。
お茶のカテキンでむし歯を予防
歯を磨く時間がないとわかっているとき、意識して用意したいのがお茶です。
お茶が含んでいるカテキンには、むし歯を予防する効果があるとされているためです。
むし歯菌はたんぱく質で構成された菌で、カテキンはたんぱく質を付着させやすい性質を持っています。
お茶を飲めば、多少のむし歯菌をお茶と一緒に胃に押し流し、口内を清潔にできるということです。
また、カテキンには、むし歯菌の歯垢を作ろうとする働きを抑制する効果も期待できます。
カテキンを多く含むのは緑茶ですが、烏龍茶や紅茶でも代用可能です。
口内をさっぱりさせる効果もあるので、積極的に用意しておきましょう。
キシリトールガムで歯垢の酸を中和
キシリトールは、むし歯の予防効果がある甘味料の一つです。
むし歯菌はキシリトールからは酸を作ることができず、キシリトール自体がむし歯菌の働きを弱めたり、むし歯菌の作る酸を中和したりといった効果を持っています。
キシリトールガムであれば、噛むことで唾液の分泌を助ける効果も見込める他、安価で手に入るため、用意しておくのがおすすめです。
昼と夜の歯磨きはどうする?
では、朝だけしっかり歯磨きをおこなえば、他はおろそかにしても良いのでしょうか。
また、おやつとして間食することもあるはずです。
ここで、朝以外の歯磨きはどうすれば良いか見てみましょう。
昼の歯磨きはできたらおこなうべき
おろそかにされがちな昼食後の歯磨きも、できたらおこないましょう。
毎食後の歯磨きによって、口内が清潔な時間を長く保つことができます。
職場でも、歯磨きセットを持っていけるのであれば、歯磨きをしておくのがおすすめです。
持っていけないという場合でも、歯磨きシートで代用できることがあるでしょう。
ガーゼを巻いた指や清潔にした指で歯をこすったり、うがいをしたりするだけでも、多少の違いがあります。
夜は必須。できるだけ丁寧に
朝の歯磨きと同様、夜の歯磨きは必須です。
前述の通り、就寝中は唾液の分泌が抑えられて、乾燥から細菌の増殖が進んでしまいます。
つまり、就寝前にしっかり汚れを落としておかないと、放置したむし歯菌や歯周病菌が増殖してしまいます。
口内環境を荒らされるリスクが高まるということです。
疲れている方や時間がない方でも、夜の歯磨きはできるだけ丁寧におこないましょう。
おやつの後にはうがいだけでも
子供がいる方は、子供におやつを与えることがあると思います。
子供は頻繁な栄養補給が欠かせないため、朝食から昼食の間や、昼食から夕食の間のおやつを必要とします。
おやつ後も、おやつは甘いものが多いため、できたら歯磨きをおこなうのが望ましいです。
しかし、毎日おやつのたびに歯磨きとなると、いやがる子供も多いでしょう。
その際は、うがいだけでもする習慣がつくように指導してあげてください。
朝の歯磨きで効果がない方はティコニーデンタルオフィスへ
ティコニーデンタルオフィスでは、むし歯治療や歯周病治療の他、予防歯科も受け付けています。
予防歯科では、歯磨き指導、クリーニングやフッ素塗布などが可能です。
朝に2度がんばって歯磨きをしても、まったく効果が出ない場合は、歯磨きの仕方が間違っているかもしれません。
また、上手く磨けているように見えても、むし歯や歯周病が進行しているケースもあります。
歯に悩みを抱えている方や、むし歯や歯周病が心配な方は、ぜひ一度ティコニーデンタルオフィスへご相談ください。